患者との意思疎通が苦手な人は医療現場で歓迎されません

近年、医療現場におけるコミュニケーション能力の向上が指摘されています。薬剤師のコミュニケーションの目的は、患者さんのために、より多くの情報を引き出し、的確な薬を提供することです。コミュニケーションが上手くとれると服薬状況も格段にアップします。

薬局で薬剤師がコミュニケーションを必要とするのは、処方箋を持ってきた患者さんに対して、病歴やアレルギー歴などの情報を得るための「患者インタビュー」と、処方箋の内容に疑義があった場合の、医師への疑義照会です。

いずれの場合も、相手の状況に合わせて上手くコミュニケーションをとることが求められますが、残念ながら、コミュニケーションを苦手にしている薬剤師の方は少なくありません

この背景には、従来の4年制薬学教育では創薬や分析といった「モノ」としての医薬品を学ぶことに主眼が置かれていたため、医薬品を通じて患者のケアに貢献するという「臨床薬学」の視点が欠けており、その結果として患者との接し方などを学ぶ機会がなかったという事情があります。そのため国家試験に合格して病院や薬局に勤務しても、臨床薬学が欠けていたために、直ちに業務に対応することが難しく、現場での再教育が必須でした。

この問題を改善するために導入されたのが、2012年に初めて新卒者が医療現場に出ることになった六年制薬学教育です。従来の創薬偏重から臨床薬学を重視した6年制の薬学教育では、病院薬局、保険薬局で計5ヶ月の実務実習を行うことが義務付けています。実際の医療現場で長期間の実施を行うことで、患者とのコミュニケーション能力を養います。

同様の目的で、患者との会話を想定した模擬訓練やスモールグループディスカッションなど全く新しいカリキュラムでの授業も六年制薬学教育で導入されています。

したがって、これからの薬剤師は、高いレベルの薬学知識を有していることは勿論、エビデンスに基づいて自分の考えを患者や医師に伝えることのできるコミュニケーション能力が必須となります。「薬剤師の免許があれば、一生安泰」という時代は終焉を迎えようとしています。コミュニケーションを苦手とする薬剤師には厳しい時代が来ることは間違いありません。

薬局現場における患者とのコミュニケーションには「伝える」「聞き出す」「分かち合う」「聴く」「考えてもらう」などの要件が必要です。コミュニケーションに関しては有名な「メラビアンの法則」があります。これは言語だけでは相手にメッセージが7%しか伝わらず、見た目・表情・しぐさ・アイコンタクトで55%がプラスされ、話のスピード・声の大きさやトーンなどでさらに38%が追加され、100%に近づくというものです。

この法則でわかるのは言語情報(言語そのものの意味)だけで十分な意思疎通を行うのは困難で、視覚情報等の「非言語コミュニケーション」が欠かせないということです。
薬剤師は調剤された医薬品を患者に渡す際に、キチンと相手の目を見て、理解しているかどうかを確認することが大切です。文章を読み上げるように説明するだけでは、メッセージは伝わらないのです。

医療従事者同士の会話は専門用語や略語が頻繁に登場します。調剤薬局でも同様です。しかし、患者と会話する際に相手が医療に関しては素人であることを忘れて、「相互作用」「禁忌」「分割調剤」などの専門用語をついつい使用してしまう方が少なくありません。薬剤師には日常用語でも、患者にとっては専門用語です。薬剤師には専門用語を日常用語に置き換えることが求められます。

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